時計

SWATCH(スウォッチ)の野望 

人類の時計の歴史は紀元前4000年、影を利用した日時計からと言われています。その後、科学の進歩に伴い時計も進化していくわけですが、13世紀に機械式時計が生まれ、それが携帯性を持ったのは16世紀と考えられています

そして1969年12月25日、セイコーが世界初のクォーツ腕時計「アストロン35SQ」を発表しました。日本のセイコーが世界のSEIKOになった瞬間と言えると思います

しかし、改めて驚くべきは人類が月へ行く頃まで、腕時計と言えば機械式だったということでしょうか

70年代に入るとSEIKOが特許技術を公開したことで、腕時計の世界地図はクォーツ時計一色に塗り替えられ、スイスの時計産業は息も絶え絶えの暗黒時代に突入します

時計の進化は精度の追求の歴史と言えると思いますが、月差という新たな基準を打ち出したクォーツ時計にとって、日差を競っていたスイスの機械式時計メーカーは敵ではなく、スイス時計は、輸出額は半減、世界の市場占有率は50%から15%に落ち込み、多くのメーカーが廃業や休眠に追い込まれた結果、時計産業の従事者は9万から2.5万人に減ったと言います

腕時計の始まりは、軍人が懐中時計を腕に巻いたのが起源と聞いたことがありますが、一般市民にとっての腕時計は今も昔も装飾品の一部だと思います。一本、一本の機械式時計を手で仕上げていたスイスの職人にとってクォーツ時計は、量産可能なチープな道具にしか思えず、そのプライドが時代の波に乗り遅れさせたのではないかと想像しますが、1983年、絶滅危惧種に指定されそうになっていたスイス時計界に誕生したのがスウォッチです

時計本体は耐久性の低そうなプラスチック、ベルトはペラペラなナイロン、飽きの早そうな奇抜なデザインと、当時初めて見たときは使い捨てのオモチャ時計だと思いました

このチープでユニークな時計達が腕時計の価値観を一新させ、70年代にSEIKOが塗り替えた時計の世界地図を十年ぶりに塗り替えました。それまで装いに合わせて腕時計を付け替えるという考えは一般人にはなかったと思います

スウォッチが世界へ提案したのはセカンドウォッチという考えです。気分や状況に合わせて使ってよという考えは革新的だったと思います。仕事でも、デートでも、飲み会でも、冠婚葬祭でも同じ時計を使う理由はなかったのですが、それを気づかせてくれたのがスウォッチです。手ごろな価格に毎シーズン追加される豊富なラインナップで、セカンドウォッチにとどまらず、3本目、4本目を買ってしまうユーザーは多いと思います

ところで、SWATCHはスイスのメーカーです。Swiss WATCHが名前の由来と聞いたことがありますが、Second WATCHが本当の由来のようです。スウォッチが世界中で売れたことにより、スイス時計は王座を奪還したと言えるかとなると、やっぱりそれは違うと思います

何世代にもわたり受け継がれてきたスイスの伝統と誇りである機械式時計が復権してこそ、スイス時計が世界の王座に返り咲いたと考える人は多いと思います。が、それこそがスウォッチの野望だったのではないかと思います。何本持ってもセカンドウォッチはセカンドウォッチです。買い集めるうちに目も肥えてきます。一生モノが一本欲しい! ファーストウォッチへの憧れです。このときユーザーはスウォッチと正反対の時計を志向をすると思います

ブランドに歴史があり、流行りに左右されない普遍的なデザイン、重厚感があって、耐久性も高い一本。色々と勉強するのに伴い予算は上がるが一生モノである。いや、子どもに譲るなら予算は二倍でもと上を見ればきりがないが、間違いなく言えるのは機械式時計で探している、ではないでしょうか

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行く着くところは価値観です。時計探しをしているうちに自分の意外な一面に気づくかもしれません。人生の中で重きを置くもの、それは自分の理想であったり、夢であったり、生き方であったりすると思います

その結果、時計に求めるものは、伝統であったり、名門の血筋であったり、ロマンであったり、あるいは革新性や先見性、洗練さかもしれません。そんな多様な価値観を満たすためにスウォッチは全方位的にブランドを吸収し、スウォッチグループは一大帝国を築こうとしているように見えます

吸収されたブランドは息を吹き返し、かつての輝きを取り戻していきます。セカンドウォッチという新たな切り口で腕時計のマーケットを拡大し、ファーストウォッチのブランド復興によりスイス時計の復権を果たす、それこそがスウォッチの目的ではないかと考えると、チープな時計メーカーが名だたるブランドを吸収していく意味が理解できます

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スウォッチが登場したとき、瀕死のスイス時計業界の救世主になろうとは思いもしませんでしたが、現状が全てを物語っていると思います

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